そういえば、英作文と漢文の参考書を挙げていなかった。
まず、英作文から
『英作文 ハイパートレーニング 和文英訳編』(桐原書店)
これはかなりお薦め。
著者の大矢復さんの参考書は非常に良いものが多いが、この参考書も例外ではない。
以前紹介した☟
『読むための英文法』や『今井の英文法教室』などに通じる部分もあるのだが、より実践的で英作文を学ぶというだけでなく、英語と日本語の違いを理解し正しく運用する力をつけることが出来る。
網羅系の英文法問題集をやった後に、アウトプット用として使えば効果的だ。
英作文対策としてだけでなく、英語力そのものを向上させる足掛かりとなってくれる一品。
少し本文から引用してみる。
P66の「関係詞」の「非制限用法」に関する記述だ。
以下引用
まず日本語で考えてみよう。「海に囲まれている日本は魚がおいしい」
…普段から我々はこのような言い方をしているが、よく考えると変な言い方だ。
「海に囲まれている…」という修飾語は本当に必要なものなのだろうか。
「海に囲まれていない日本」などというものはもともと存在しない。日本は一つしかなく、海に囲まれているわけだ。したがって、この修飾語は不要であり、単に「日本は魚がおいしい」と言えばよさそうである。
けれども、やはりこの「海に囲まれている…」という部分にはそれなりの役割がある。
一見、「日本」という名詞を修飾しているようだが、実は「海に囲まれているから日本は魚がおいしい」のように、理由を表しているのだ。
英語でも同じような現象がある。
引用終わり
といったように、非常にわかりやすく丁寧に英作文のポイントを説明してくれている。
…と同時に、漫然と問題を解いて分かった気になっている生徒が見落としがちな要素が詰まった参考書だ。
因みに中学校で習う関係詞の限定用法では、固有名詞などは先行詞にしないと教える。
その理由は単純で「向こうで走っているマリ」といった場合、それじゃあ今「向こうで走っていないマリ」がこの世に存在するのか?という話になるからである。
(勿論、同姓同名の話をしているわけではない。「固有名詞」とはその唯一の存在を指す言葉だからである)
「私が登ったことのある富士山」なども同様だ。
非制限用法は日本人にはあまりピンとこないものではあるが、英語においてはしっかりと区別されている。
よく言われる教科書的な表現だが、
She has a son who became a doctor.
She has a son, who became a doctor.
上の文では彼女には他にも「息子」がいることが含意されている。
(つまり「医者になった息子」は一人で、他にも息子が存在しているということ)
これは教科書的な「使えない」英語ではなく、イギリスの権威ある語学研究機関も認めていることだ。
関係詞の非制限用法では色々と「遊び」のある例文が作れる。
He said nothing which made her angry.
He said nothing, which made her angry.
これは、今年 ICU を受験した生徒に非制限用法を解説した時に私が書いた例文の一つなのだが、カンマ一つで全く意味が変わってしまう。
上の文では、関係詞節を前の名詞の nothing にかけて、
「彼は彼女が起こるようなことは何も言わなかった」
となる。
下の文では、カンマの前でいったん切って
「彼は何も言わなかった。そしてそのことが彼女を怒らせた」
となる。
(ちなみに、下の文では前の文である He said nothing 全体が先行詞になっています)
話が脱線したので、参考書の紹介に戻る。
漢文では、
『漢文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』(KADOKAWA)
がお薦め。
レイアウトがちょっとごちゃごちゃして読み辛い点はあるのだが、書いてある内容は大変良い。
特に、「基本構造(語順)」の話をここまでしっかりと解説してある参考書は他にないであろう。
よく中国語は英語と語順が同じなので、中国人は英語が上達するのが早いと言われるが、そういったことが例を挙げながらわかりやすく説明してある。
この本でもレベルが高いと感じるのであれば、
『三羽邦美の漢文教室 改訂版』(旺文社)
あたりから始めればよいだろう。
それにしても、夏休みが短縮されるのは避けられないことなのだろうか?
最悪、無くなることも考えられるが、正直あまり上策だとは思わない。
この際に新学期を9月からにするべきなどの案も出ているようだが、いつ緊急事態宣言が解除されるのかも含めてしばらく迷走が続きそうだ。
当塾では、そういった世間様の「声」に耳を貸さず、粛々と入試への準備を進めていきたい。
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